Pioneer SA-9800の困ったちゃん
ある日、床屋を営んでいる先輩のところをいつものように訪ねました。
そして、いつものように珈琲なんぞをいただこうと思っていたら...
ジャイアン、オモシロいアンプがあるから、持って帰って遊んでみない?
と先輩がのたまうじゃないですか!
先輩がさらにのたまうには、その昔、程度の良い中古を手に入れて、それを友人に貸し出していたとのこと。
その友人宅で、一切鳴らされることもなく、長年埃を被っていたものが返ってきたんだそう。
そりゃオモシロそうだ!
といただいてきたのが、Pioneer SA-9800でした。
1974年リリースという、大変古い機体です。
で、このモデル、割と長寿だったようで、私の手元に転がり込んで来たのは1988年製造のブツのようです。
このPioneer SA-9800はちょっとオモシロい構造になっていまして、本体を正面から見て右側にソース入力端子があり...
同じく左側にスピーカー出力端子を持っています。
それにしても、本体がそうとう汚いです。
錆もけっこう浮いています。
錆はともかく、表面の汚れだけでも取っておきましょう。
でこのI/O群、設計者がひねくれ者でこんな形になっているという訳ではなく、これも低ノイズを目的に、この形に落ちついているんだそうです。
(その割にはブーンとハムノイズが鳴るんですけどぉw)
我が家にやって来た時は、非常に出力が不安定でした。
フロントパネルのどのセレクターやスイッチをいじっても、ギャングエラーのようなノイズが乗ります。
(幸いボリュームは無事でした)
音も気まぐれに、出たり出なかったり。
驚いたのは、内部を見るためにトップカバーを外したら、右chが鳴らなくなっちゃった!
これは大胆に手を入れる必要がありそうです。
ということで、手の届く範囲内で、全電解コンデンサーを交換することにしました。
しかし各基板が、コネクターではなくて、ラインを直接ハンダ付けして接続されています。
これではお気軽に基板を取り出すという訳にはいきません。
ヤレヤレだなぁ(@@;)
とりあえず、各部をチェック!
パワー段...
ア!
これは基板と放熱板が一体になっているヤツですね。
ネジを外せばバラせますが、それでも部品の交換は少々厄介です。
実際に放熱板が外して見たの図。
一々本体ごとひっくり返して、基板の表面と裏面をいったりきたりするわけにもいかず。
しかし、交換すべき部品が全部で8つだけだったので、心配していたよりは大変ではなかったです。
ヨカッタヨカッタ!
次は、初段増幅部も乗っていると思われるコントロール基板。
写真をよくよくご覧いただければ分かると思うのですが、いわゆるフィルムコンデンサというのは一部にしか使われておらず、使用コンデンサの多くはマイカコンデンサーやセラミックコンデンサー。
要所要所にはスチロールコンデンサーも使われています。
ウ〜ン、これは音への期待が否が応でも高まりますね。
この基板は、ハンダ付けされているラインが長めなので、作業性も良さそう。
反面、交換すべき部品は多い。
実際、一つずつ着実に淡々と作業を繰り返すことで、無事に部品の交換を終えることができました。
次は電源基板。
同様に作業を行い...
保護回路の電解コンデンサーも交換することにしました。
電解コンデンサー交換途中の図。
しっちゃかめっちゃかですね(笑)
ついでに、本体を裏側から見た図。
今回、ココは一切つついていません。
せっかくサービスホールが開いているんだからつつけそうなものですが、サービスマニュアルもない状態ではねぇ。
本体の重量が17キロを超えていますから、その本体を裏へ表へとひっくり返しながら作業するなんて、アンプの前に自分の体が壊れてしまいますぅ(@@;)
今回交換した電解コンデンサー。
そして、発注した部品の一覧。
一覧を見ていただくと分かりますが、敢えてオーディオ用高級グレードの電解コンデンサを選んでいます。
で、これが災いしました...
一部の高級グレード品は、リードが太いんですね。
したら、基板の穴に刺さらないじゃないですか!
無理矢理、でも慎重にねじ込みましたけど、電源基板の一部で事故が起こってしまいました。
回路を形成している銅箔がペロッと剥がれてちぎれちゃった(@@;)
なんとか復旧はさせましたけどね。
(なので、電源基板の写真をよく見ていただくと、コンデンサーが1つだけ傾いてハンダ付けされているのが確認できると思います。それが問題の箇所です)
で、可能な限りの電解コンデンサーを交換し、いよいよドキドキの電源投入です。
バチっといわないかな?
煙を吹いたりしないかな?
などと心配しながら電源スイッチを入れましたが、無事にリレースイッチが作動してくれました。
ここまではヨカッタ。
音を出すと、最初の状態よりは断然良くなっています。
しかし音を出すと、ちょっと状態が安定しない...
これは一晩鳴らして様子を見るか。
と、アンプの電源を入れたまま寝床に入り、翌朝確認すると、左chが鳴らなくなっていました(笑)
これはもうトランジスタを疑うしかない!
たぶん寿命が尽きようとしていたトランジスタが、周囲の電解コンデンサーだけ新品に置き換わって電力が安定した分、その勢いを喰らって昇天してしまったのでしょう。
しかも、ヘッドホン出力も左chだけ音が出ない状態になっていたので、これはパワー段ではなく、初段増幅部の問題だろうと目星をつけました。
となると、疑うべきはこの3つ。
2SC2240と
2SK30Aです。
幸い2SK30A以外は秋月電子通商に在庫がありましたので、すぐに取り寄せることができました。
さっそく交換してみると、今度こそ問題なく音が出てくれるようになりました!
ワァ〜イ、パチパチ!
十分に各部のチェックを行い、バラバラにした本体を組み上げ。
したら、ネジが3つも余っちゃいました。
一体どこの固定を忘れちゃったんだろう?(@@;)(@@;)(@@;)
今はSANSUIのAU-α607の上に載せて鳴らしています。
DACからの出力先を簡単に切り替えられるように、自作のラインセレクターに繋いで。
SANSUIのAU-α607には、同じくSANSUIのSP-100iEXを繋いでいます。
PioneerのSA-9800には、SONYのSS-7330Aを繋いでいます。
この組み合わせにした理由は単純で、それぞれこの組み合わせの方が音が良いから。
Pioneer SA-9800でSANSUI SP-100iEXを繋いでも、鳴らし切らないんですよね。
で、相応に古いSONYのSS-7330Aの方が相性がヨロシイと思っている訳です。
この組み合わせで鳴らし比べると、音のスケール感といい、形成される音像といい、断然SANSUIの組み合わせに分がありますね。
何よりも、SANSUIの方が音が新鮮です。
対してSA-9800とSS-7330Aが絞り出すと音は、チョット昔の音って感じがします。
悔しいなぁ...
せっかく5千円近くも出費したのにorz
追記:
アンプのトーンコントロールを調整することで、ずいぶん聞きやすい音に変化してくれました。
とてもいい音になってくれたのですが、それで余計に無音時のブーンというハムノイズが気になってしまいますぅ。
ブロックコンデンサも交換すれば良いのでしょうが、18000μFもある大容量コンデンサが簡単に見つかる訳もありません。
あっても、交換作業が大変です。
現状に甘んじるしかありません。
それでも、あまりに悔しいので、SA-9800も使っていこうと思っています。
SANSUIのAU-α607は、左chの音が歪んだままですし。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
今度はPioneer製ですか、出音はともかくチャンと動作したみたいで良かったですね。記事内ではさりげなく部品交換と書かれていますが、かなり大変だったのでは無いでしょうか。
高校の頃オーディオ屋さんに今回の様な入出力端子のパワーアンプが有りましたが高くて手が出なかったので試聴すらできなかった事を思い出しました。
投稿: ta_syumi | 2021年4月19日 (月) 15時00分
ta_syumiさん
いつもコメントをありがとうございます。
ホント出音はともかくですよね。先輩は「当時のPioneerのハイエンド機』と言うので期待しちゃったのですが、今となっては時代なりの音でした。
ご指摘の通り、部品交換は大変でした。チョット無理な姿勢で作業をしなくてはならず、作業後には腰が痛くなるし。なので時間を小分けして、少しずつ作業を進めました。結果、それが無理のない作業に通じ、事故なく作業を完結する事ができたのだと思います。
投稿: 本気でお馬鹿なジャイアン閣下 | 2021年4月19日 (月) 19時40分
SA-8000や9000シリーズは実はハイエンド向け、というよりアメリカ輸出向け機種で、あちらのリビングでは当時フツーだったけど日本の住宅ではまず導入不可能な縦横数メートルのバカみたいに巨大なスピーカーをドライブする用途のアンプだと聞きました。
30cm程度の普通サイズのウーファーで聴いてもミスマッチで音は良くないという話です。
今はあちらでも小型スピーカーで音が良い7000シリーズが高値で取引されているみたいです。ご参考までに(^_^;)
投稿: ひまぬこ | 2021年6月 5日 (土) 01時18分